心理カウンセリングやヒプノセラピー(催眠療法)もやっている精神科医です。内科経験もあり。メンタルヘルス、人生のこと 、思索、エッセイ、旅、音楽、ギター、ひとり言 etc.  息抜きに読んで頂ければ幸いです。3.11以降は、原発関連の情報中心です。
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     「放射能を正しく理解するために」という文書が文科省のHPに掲載されています。

     「放射線の影響そのものよりも、『放射線を受けた』という不安を抱き続ける心理的ストレスの影響の方が大きいと言われています」

     いつ、どこで、誰が、どういう状況の中で言ったのでしょう?

     いま、日本で、被災地やそれ以外の地域に住む人々にとって、メルトダウンが明らかな原発が再臨界の危険に瀕している状況の中でも、「放射線の影響そのものよりも、…心理的ストレスの影響の方が大きい」と言うのでしょうか?!


     「放射能のことを必要以上に心配しすぎてしまうとかえって心身の不調を起こします。」

     チェルノブイリを超えるレベルにまで危険が差し迫っていて、逃げ場のない狭い国土に住んでいるという、世界的、歴史的にも未経験の状況に陥っているというのに、「心配」しないというのは、要するに人間として、生物としての危険回避能力が完全に麻痺しているということであり、生きのびる力そのものを奪われているということです。心理的には「否認」とか「解離」という反応に陥っている可能性が高いと思います。

     「放射能のことをいつもいつも考えていると、その考えがストレスとなって、不安症状や心身の不調を起こします。」

     既に、避難所で高齢者が亡くなっていますが、「放射能のことをいつもいつも考え」たから亡くなったのではありません。相次ぐ避難の繰り返しや、薬や物資も届かない避難所の生活環境や、家を失ったり、家族を失ったりした心労が重なって亡くなったのです。
     子供も大人も、繰り返す余震や、いつまた原発が爆発して、避難しなければならないかという、現実的なストレスから不安になり、心身の不調をきたすのはむしろ当然です。そんな状況の中で誰がわざわざ自らストレスを増加させようとするのでしょう。
     寧ろ、思考停止して現実逃避する方が精神的には楽なはずですし、実際に被災地以外では、そういう傾向も認められるかもしれません。が、そのほうが余程病的で、恐ろしい事だと思います。

     「もし保護者が過剰に心配すると、子どもにも不安が伝わって、子どもの心身が不安定になります。」

     わざわざ子供を不安にさせる親がいるものですか!大人よりも子供の方が被曝に対するリスクが高いからこそ、子供だけでも避難させたいと考えるでしょうし、実際に避難している方たちもいます。
     親や子供を不安にさせているのは、何の対策も打てないまま、手をこまねいている大人たち。とりわけ、突然被曝閾値を引き上げて無理矢理登校させようとするような、政府のいい加減な言行でしょう。

     「まして、避難指示の出ていない区域に暮らしていれば、健康被害も、だれかに被害を与えることも、まったく心配はいりません。」

     では何故政府自らが、浜岡原発停止を指示したのですか?各地の原発を止めるよう求める声があがっているのは何故ですか?
     原発そのものの「安全」神話が崩れ、地震の活動期に入っている日本各地の原発が、いま現在も放射能漏れを頻回に起こしているからでしょう。明日、他の地域で「第二の福島」が起こってもおかしくない原発大国日本の中で、「まったく心配はいりません」と言えるような地域があるなら、是非教えて下さい。

     「だから、不確かな情報や、人の噂などの風評に惑わされず、学校から正しい知識と情報をもらって、毎日、明るく、楽しく、仲良く、安心した生活を送ることが心身の病気を防ぐ一番よい方法です。」

     一体何が言いたいのでしょうか。
     この冊子を作った目的は「心身の病気を防ぐ」ための一般論を説くためですか? 
     「放射能を正しく理解するために」というタイトルから何故、子供の「心身の病気を防ぐ」ために「放射能のことをいつもいつも考え」るな、「過剰に心配」するな、という結論に至り得るのか、摩訶不思議な論理展開です。
     
     それとも、不確かな情報しか出さない政府や東電の言う事を信じなさい。ネット上や海外で大量に流れている、より正確で豊富な情報には一切目を向けるな、ということが言いたいのでしょうか。

     この資料作成の指導・協力をしたという「日本小児心身医学会」って一体どんな団体かと思い調べてみました。当該HPの「学会の歴史と現状」の記載によれば「昭和58年3月19日に第1回の学術集会を岩波文門(当時、防衛医科大学校小児科教授)会長のもとに東京で開催」という、かなり新しい学会で、防衛医大の教授が発足させたようです。「会員数は645名(平成8年3月末現在)で、ほとんどが小児科学会会員であるが、若干の他職種の者もおり、小児心身医学を志し勉強する専門職の方々には広く門戸を開いている。」と、小規模かつ精神科的な専門性は低そうです。しかも、この文章自体が、平成8年3月末現在のようで、その後更新されておらず、学会雑誌も「第16巻 1・2号 (通巻第29号) 2007年12月」以降は出ていないようです。とすると恐らく専門家のあいだでは、あまり知られていないはずです。

     被災した子供の心理に関わることなら「日本児童青年精神医学会」「日本小児精神神経学会」等、ずっと歴史の古い学会があり、実際、被災地の子供のメンタルケアについてHP上でも掲載しています。
     「兵庫県こころのケアセンター」が、かなり詳細で具体的な「サイコロジカル・ファーストエイド 実施の手引き 第2版」(Psychological First Aid ; PFA)の日本語版を作成・掲載しています。
     が、さすがに被災者や国民の気持ちを逆なでするような、こんな無茶苦茶な論理展開は出てきません。
     

     本当に文科省に対して「指導・協力」をしたというなら、「日本小児心身医学会」というのは「原子力安全委員会」や「原子力安全・保安院」などと似たような、一種の御用学会とみなされてしまっても仕方ないと思います。

     詳細な反論を知りたい方はこちらをどうぞ。
    http://onihutari.blog60.fc2.com/blog-entry-48.html



    【2011/05/18 13:19】 | 社会
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